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ご近所未来ラボ by ご近所SNSマチマチ

ご近所SNS「マチマチ」が運営するブログです。「マチマチ」のお知らせから、参考になるコミュニティデザインの事例まで色々発信していきます!

コミュニティデザイナーの役割は、“楽しさ”と“課題解決”をつなぐこと――studio-L・山崎亮さんのまちづくり

ご近所SNSマチマチが運営する『ご近所未来ラボ』では、「地域活性や街づくりに携わる方々の力になりたい」という思いから、“コミュニティデザイン”についてのリサーチやインタビューを行なっています。

今回のインタビュー企画では、日本でいち早くコミュニティデザインの概念に着目し、“コミュニティデザイナー”という肩書きで幅広い活動を展開している、studio-L代表の山崎亮さんにご登場いただきました。

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山崎さんは大学でランドスケープデザインを学び、卒業してからは設計事務所に就職。その後、大学の恩師の誘いで兵庫県にある「有馬富士公園」のパークマネジメントに参画します。ここでの経験を機に、山崎さんの興味は少しずつ“ハードからソフト”へ、“ものづくりから場づくり”へと移り変わっていきます。

2005年、山崎さんは所属していた設計事務所より独立。それから間もなく、コミュニティデザインを専門的に扱う事務所「studio-L」を立ち上げます。studio-Lはこれまでに「海士町総合振興計画」の策定協力や、鹿児島市の商業施設「マルヤガーデンズ」のコミュニティデザイン、「震災+designプロジェクト」などを手がけてきました。コミュニティデザインという形のないものでありながらも、その取り組みは高く評価されており、グッドデザイン賞をはじめ、数々の受賞歴を誇っています。

そんな“日本のコミュニティデザイナーの第一人者”とも呼べる山崎さんに、「これからの社会におけるコミュニティデザインの重要性」について、じっくりとお話を伺いました。

コミュニティデザイナー、必要だけど“うさんくさい”?

――山崎さんは、日本でもいち早く「コミュニティデザイナー」と名乗ってお仕事をされていました。ここ数年でのコミュニティデザインのニーズの高まりは、肌で感じられていますか?

山崎:声をかけていただく機会は増えましたね。おそらく、これからは「コーディネーター」が忙しくなってくる、足りなくなる時代だと思っています。いま、社会にあふれている課題は、個人でどうにかできるものではなく、何人かが協力しなければ解決できないものばかりです。

そこで、人と人をつなぐ役割を果たせる職能が求められるようになってきています。僕らのような職業の人間は、これからもっと目に見える成果を出して、社会から信頼を得ていかなければならないと。

――信頼を、ですか?

山崎:これまでの日本では、長期間かけて技術を洗練させた「職人」が好まれ、信頼されてきました。その一方で、「コーディネーター」や「コンサルタント」といった職業は、どうしても“何をしているかわからない、うさんくさい存在”だと捉えられていて。コミュニティデザイナーも、このくくりの中に入っているのが現状です。

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山崎:ただ、時代の変化に応じてニーズが高まる存在は、みんな“うさんくさい”からスタートするもの。これから一個ずつ成果を出して「この人たちは地域の課題解決に必要なんだ」と伝えていければ、20年後にはコーディネーター的人材の存在価値を、多くの人が理解してくれる世の中になっていると思います。

コミュニティデザイナーは“よそ者”であるべき?

――今まで、山崎さんがコミュニティデザイナーとして地域に入っていく際にも、おそらく住民にとっては“うさんくさいよそ者”という認識を持たれることが多いかと思います。そういった警戒心をほどいて、地域の方々との関係性を築いていくために、大事にされていることはありますか?

山崎:明確にひとつ、意識していることがあります。それは、よそ者である自分たちが「これをやりたいです!」と言わないことです。「そんなん必要ない!」「アンタが勝手にやりなはれ!」と突き放されてしまいますから。

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山崎:いきなり現れたよそ者が「この地域をよくするために来ました!」なんて言いながら近寄ってきたら、それこそわかりやすく“うさんくさい”でしょ?(笑)

だから、最初は「アンタ、なんでこんな山奥まで来たんや!?」って聞かれたら「いや、特に理由はないんですけど! どんなですか、生活は?」というやり取りからスタートするんです。

――なるほど……正直に感想を言うと、ちょっと意外でした。コミュニティデザインって、もっと明確にプランがあって、それを元にこちらから働きかけていくイメージを持っていました。

山崎:もちろん、こちらも大元の依頼があって動いていたり、事前にリサーチしていたりはするので、何の計画もなしに入っていくわけではありません。ただ、自分の中にあるアイデアやプランは、絶対に最初から出さない。まずは、住んでいる人たちの話を聞くことから始めないと、地域の本当の姿、本当の課題は見えてきませんから。

f:id:tks-west:20170322105306j:plainstudio-Lが協力した千葉県睦沢町Line85 上市場魅力づくりプロジェクト」でのワークショップ

山崎:「どうですか、ここでの生活は?」「最近、夢中になっていることは何ですか?」「面白いですね、それ!」「ぜひ、連れていってください!」……こういうコミュニケーションを住民と重ねて、そのコミュニティの実態を知る。そこから少しずつ「困っていること、ありますか?」と、課題を探っていく。ちゃんと足を使って見えてきた課題をベースに、プロジェクトを再構築する。ここまで段階を踏んで初めて、住民に提案をします。

――提案する時に、気を付けていることはありますか?

山崎:こちらが主体にならない、旗を掲げないようにすることですね。「皆さんに話を聞いた結果、こんな取り組みが必要やと思ったんですけど、どうでしょう?」って聞いて、反応が悪かったら「違う? じゃあやめときましょ」って、すぐに引き下がるんです(笑)

こちらの提案に対して住民が「いいね!」と言ったら、「いいねって言うたね? 自分らでやるんですよ?」と返して。「いや、俺らがやるとしたら、もっと変えてほしいわ」「そしたら、どんなんがいいですか?」とボールを投げていく。

――そうやってプロジェクトの主体を、当事者である住民に移していくんですね。

山崎:僕らはむしろ、“よそ者”というスタンスを守らなければなりません。そこに住んでいるわけではない、いつかいなくなる存在ですから。 “よそ者”として、住民が地域の課題に目を向け、自発的かつ持続的に活動できるようなきっかけを提供していく。それが、コミュニティデザイナーの役割だと思っています。

地域の活動には“正しさ”ではなく、“楽しさ”を

山崎:それと、コミュニティデザインにおいて、大事なポイントがもうひとつ。それは、「やってる本人たちが楽しんでできること」です。地域の課題解決なんて、真面目に考えすぎたら固くなってしまいますから。楽しく取り組めるような仕組みや視点を見出して、投げかけるようにしています。

――山崎さんの著書『縮充する日本』の中で、印象的だったフレーズがあります。それは「地域の課題解決のプロセスを、キャンプでカレーを作るような楽しい活動にするのが、コミュニティデザイナーの役割」という部分で。 今のお話って、まさにここに該当するものだなと。

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山崎:そうなんですよ。キャンプでカレーを作るのって、冷静に考えると手間も時間もかかるし、かなり面倒くさい行為じゃないですか。でも、その過程自体をアクティビティとして捉えられていると、面倒もコンテンツになる。「お前、なんでこんな切り方してん!」とか、「すごいモサッとした味するんやけど!」といった試行錯誤、うまくいかないことも含めて、みんなで盛り上がれるんです。

――「課題解決が楽しめる」というのは、コミュニティにとって理想的な状態ですね。

山崎:地域の活動も、キャンプのカレー作りみたいに“楽しさ”を感じてほしいし、そうじゃないと続かないと思っています。課題解決に対するアプローチを考えると、どうしても「こうあるべき」という“正しさ”が先行してしまいがちですが、“正しさ”のためだけに動ける人はそんなに多くない。

逆もまた然りで、“楽しさ”があれば、人はどんなに難しい課題に対してでも、自発的に試行錯誤できるんです。課題解決のプロセス上に、“楽しさ”を見出して提示していくことが、コミュニティデザインのカギになるなと実感しています。

人は“理性より感性”で動く――まちづくりのしかけ方

山崎:今の「正しさと楽しさ」の話にも繋がるのですが……人間の脳って、基本的に2つのシステムで動いていて。

――2つのシステム、ですか?

山崎:はい。「感性」のシステム1と、「理性」のシステム2ですね。前者は直感的な“好き嫌い、気持ちよさ、楽しさ”などを判断します。対して後者は“価値があるかどうか、意義深さ、正しさ”などを思考するシステムです。このシステム1と2との大きな違いって、何だと思いますか?

――うーん……システム2の方が頭を使う、ということでしょうか。

山崎:そうそう。要は、システム2には予備知識が必要なんです。知識がないと「何が社会にとって必要か、何がコミュニティにとって価値になるか」は、判断できない。一方、システム1には知識がいりません。勉強していなくても「気持ちいい!」とか「うまい!」は感知できますよね。「好き!」や「楽しい!」には、少し知識が必要な部分もありますが、どちらかと言えば断然システム1寄りでしょう。

また、2つのシステムでは、判断が下るまでの速さが違います。システム1は感覚ですから、ものすごく速い。食べたらすぐに「うまい!」ってわかりますよね。システム2は、思考しないと判断ができないため、システム1に比べると圧倒的に遅いんです。

――とすると、システム1の方が、システム2よりも優先度が高い?

山崎:一概にそうとは言えませんが、社会全体で見ると、システム1の影響の方が大きいと思います。ほら、みんな「身体に悪いかも……」と思いつつタバコは吸うし、お酒もたくさん飲んだりするでしょ?(笑)

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――それは、システム2の「正しさ」による判断よりも、システム1の直感的な「カッコよさ」や「気持ちよさ」の判断結果が勝っている典型例ですね。とてもわかりやすい……!

山崎:だから、社会貢献的な活動であればあるほど、「どうシステム1に訴求していくか」を考える必要がある。楽しさを求めていくと、外野からは「浮かれてる」「遊びでやってるのか?」などと言われることもあります。でも、結局は直感的なよさが伴わないと、持続可能でスケールする活動に結びつきません。

「楽しい」というシステム1からプロジェクトに入ってもらって、どんなふうに「みんなのため、地域のため」というシステム2の思考をインストールさせていくか。いまのまちづくりのフィールドには、この「システム1からシステム2への移行」の導線をデザインしていく力が必要なんです。

住民を“市民”に変えるプロセスをデザインする

――「楽しい」から入れるプロジェクトの骨組みを作り、そこに住民を引き入れて主体性を育て、持続可能な活動にしていく……言葉で整理するとシンプルになりますが、実際は根気のいる働きかけになりそうですね。プロジェクトの主体を住民に移していくと、山崎さんが読めない方向に進んでいくことも多そうだなと。

山崎:全然読めないですね(笑)。でも、むしろそれでいいんですよ。僕らが思いもよらない活動や発見が生まれる方が、実は重要だと思っていて。

ある地域でコミュニティスペースを作ろうという話になった時に、僕らは「若い子たちも集まるように、白を基調にしたおしゃれなカフェっぽい場所にしよう」と提案したんですね。てっきりその方向でいくかと思っていたんですが、ある日studio-Lのスタッフが現地に行ったら、そのスペースの壁、全面に竹が張られていたんです。スペースを運営する地元のおっちゃんたちが、「竹がいい!」と自主的にリフォームしたようで。

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(実際に竹が張られたコミュニティスペース@千葉県睦沢町「上市場こぢゃ倶楽部」

――おしゃれカフェのはずなのに(笑)

山崎:「これじゃあ多世代が集まる場所にならない……」って、そのスタッフは本気で取り外すかどうか悩んでいました(笑)。でもね、竹張りにしてからそこに集まる人が増えて、新しいコミュニティができてきたんですよ。僕らは「これだよ、目指すべき形は!」と、大盛り上がりしましたね。住民の皆さんも、自分たちの施策に効果が出たことで、自信がついたみたいで。その後はこちらが何も言わなくても、「次は何をしようか?」と楽しそうに話し合って、どんどん行動に移しています。

――住民の皆さんにとっても、自分たちの力で住んでいる地域を元気にできたら、きっと楽しいでしょうね。

山崎:楽しいし、やりがいがあるんですよね。ほかにも、広島の方には狼煙(のろし)ばっかり上げてる人たちがいて。

――狼煙、ですか? それが地域活性とどのような関係が?

山崎:あまり関係ないんです(笑)。これは、広島県と愛媛県が共同で開催した観光まちづくりイベント「瀬戸内しまのわ2014」のお手伝いをした時の話で。

そのイベントで「地域の魅力を活かしたら、どんな企画ができるか」を、住民の皆さんと一緒に考えたんですよ。そしたら「よし、狼煙を上げよう」という結論になって。なんでも昔、瀬戸内海に朝鮮通信使が来ていた頃に、このあたりでは狼煙で連絡を取り合っていた……との縁があるのだとか。

f:id:tks-west:20170322104222p:plain(広島県広島市安芸区から始まった「のろしリレー」

 

山崎:僕らは「危ないから止めときなはれ!」って言ったんですけど、皆さんは「やる!」の一点張りでした(笑)。ただ、そうやって反発してくれたことが嬉しくてね。それって、紛れもない彼らの主体性じゃないですか。

――まさしく(笑)

山崎:もうね、「狼煙上げたい」っていうのは理性じゃない。上げたところで、何につながるかもわからない。それでも「やりたい!」って気持ちは、大切にしなきゃいけないんです。

それで、実際にやってみたら、思わぬ変化が起こるんですよ。狼煙を公園で上げ始めたら、そこに人が集まってきて。「火が燃え移らないように」と、住民が率先して公園のゴミ拾いや草刈りをするようになったんです。

――それこそ、先ほどのお話にも出てきた「システム1から、システム2への移行」ですね。

山崎:そうなんです。こんなふうに、主体的に地域のために活動できる人たちのことを、僕らは“市民”と表現しています。「住民を“市民”に変えていくこと」が、地域活性のポイントになる。これを受けて言うと、コミュニティデザインは「住民を“市民”に変えていくプロセスをデザインする行為」とも表現できますね。

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(「のろしリレー」は、現在も有志によって毎年開催されている

田舎こそ、ご近所SNSのニーズあり?

――地域に入ってコミュニティデザインをする上で、「住民同士のコミュニケーションをどう盛り上げていくか」という観点は不可欠だと感じています。そこで「マチマチ」のような地域特化のSNSは、どのように役に立ちそうでしょうか。

山崎:リアルでの交流が担保されているという前提で、そこに地域特化のSNSが加わると、コミュニティの成長はより加速していくと思います。今はFacebookで非公開グループを作って、そこに住民を招待して……という形でオンライン上のコミュニティを作ってますが、確かにちょっと面倒です。

住民の皆さんが安心して、日常的にコミュニケーションを取れるプラットフォームとして「マチマチ」が機能してくれるのなら、ぜひ活用したいなと。欲を言えば、物々交換が簡単にできるシステムや、さまざまな告知がジャンル別に一覧できる掲示板など、Facebookのグループにはない機能が追加されると、僕らとしては非常にありがたいですね。

――リアルの交流の場がしっかりと機能していれば、オンラインのコミュニティはあまり必要ない……という状態になったりもするのでしょうか?

山崎:いえ、そんなことはなくって。実は、都市部よりも農村部の方が、SNSのようなオンラインツールの必要性があると感じています。田舎って車社会だから、みんな歩かないんですよ。冗談のような話ですけど、50m先のお隣さんの家に行くのにも車乗る人いますから(笑)。それくらい「車に乗る」ことの心理的ハードルが低いんですよね。

だから田舎には、皆さんがよくイメージするような「すれ違いざまに挨拶して立ち話」みたいな光景って、意外と少ない。車移動では、偶発的なコミュニケーションは生まれないですから。加えて、飲み屋やゲームセンターのような、人のたまり場になる場所もほとんどない。

――ということは、潜在的にコミュニケーションする場を欲している?

山崎:そう、会話したくってしょうがないんですよ。田舎にうまく地域限定のSNSを導入することができたら、皆さん喜んで使い倒すと思います。そうやって地域コミュニティが育って、誰も孤立しない状態になってくれたらいいですよね。

地域包括ケアシステムで求められる、コミュニティデザイナーの力

――地域活性や町おこしの文脈でコミュニティデザインが必要とされるのは、わかりやすい事例かと思います。これからの社会の中で、コミュニティデザイナーが切実に求められるのは、どんなフィールドだと感じられていますか?

山崎:直近で必要とされるのは、医療・介護の現場ですね。すでに超高齢社会に突入しているこの国を支えるには、医療と介護の連携が不可欠。ここに最近、コミュニティデザイナーの需要が生まれ始めています。

――それはどうしてでしょうか?

山崎:大きく2つの理由があります。ひとつは、今の医療と介護がバラバラだからです。2000年代に入って介護が制度化されるまで、看護師やリハビリ師は医師の指示ありきで動いていました。つまり、介護にまつわる行為の責任の所在のほとんどが、お医者さんにあった。この関係性が結果的に「医療>介護」というヒエラルキーを生み、介護が医療の末端のように位置づけられてしまったんです。

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山崎:これからは、医療と介護は対等に議論をしながら連携を取っていく必要があります。けれども、医療側が介護にアプローチすると恐縮してしまったり、介護側から医療側にアプローチしても聞き入れられないことがあったりと、今までの関係性を取っ払うことに苦戦している。本当は対等に話をしたいのに、お互いにどうやって歩み寄っていけばわからなくて、困っている現場の人たちが多いんです。ここにコミュニティデザイナーが入って、話し合える土壌を育てることができたら、医介連携はよりクリエイティブになると思っています。

――コミュニティデザインの力で、2つのコミュニティが手を取り合うための橋渡しをするのですね。

山崎:もうひとつは、医介連携の先で、もっとたくさんの人たちとつながる必要が出てくるから。医療と介護が連携を取れたら、高齢者の生活は万事安泰……なんてことはなく、あくまでそれは第一歩。薬事や保険との兼ね合いも一緒に考えていく必要もあるし、住環境も整えていかなければいけない。福祉や教育の現場とうまく絡めたら、高齢者が元気で過ごせる活動を多方面に展開できそうですよね。

――高齢者のよりよい生活を、医介連携を中心とした地域のネットワークを構築することで支えていくと。

山崎:高齢者に限らずケアが必要な人がいたら、さまざまな角度から支えてあげられるような地域づくりを、私たちは目指していくべきで。これを厚生労働省は「地域包括ケアシステム」と呼んで、推奨しているわけです。

――なるほど。

山崎:実際に医療と介護の現場には、国から「地域包括ケアシステム進めてね」とのお達しが届いています。ただ、医介間のコミュニケーションに苦労している中で、多業種との連携なんて手が回らない。ましてや、いきなり「地域のご近所さんたちと協力していきましょう」と言われても、何から手を付けたらいいかわからない。

――「地域包括ケア」を実現させるためには、その基盤となる地域コミュニティづくりが必要になってくるわけですね。

山崎:そうなんです。在宅医療のニーズが増えていくことも考えると、医療・介護にとどまらない、地域での支え合いが重要になってきます。その仕組みづくりにおいて、コミュニティデザインはきっと役に立てるはずです。

これから見直される“地域教育”と、コミュニティデザインの接続

山崎:医療・介護と同様のレベル感で、これから確実にコミュニティデザイナーが求められるフィールドを挙げるとしたら、教育現場ですかね。

――それは、「教育現場が地域とつながる意識を持ち始めた」ということでしょうか。

山崎:その通りです。教育は本来「家庭教育・学校教育・地域教育」という3つの柱で成り立つもの。それが今の日本では、学校教育に偏重してしまっている。家庭教育は塾に代替され、地域教育はほとんど機能していません。

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山崎:けれども、社会に出ていく力を養おうと思ったら、地域教育ほど大事なものはないんですよ。そこが今、見直され始めていますね。文部科学省でも「チームとしての学校」という方針を打ち出して、学校と地域社会が連携を取っていくことを推奨しています。

――医療現場における「地域包括ケア」と同様の動きが、教育現場でも見られていると。

山崎:どちらも「助け合い、学び合える地域社会の再構築」を目指している動きです。たとえば、地域の八百屋やパン屋さん、銀行員、お寺の住職が、子どもたちに何か教えるとしたら……ちょっと考えただけでも、楽しくなりそうですよね。ここに、定年退職した方々が教える側に加われば、さらに学びが広がっていきます。それはきっと、教科書を読んでいるだけじゃ身につかない、生きた学びです。

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(studio-Lがサポートした「立川市子ども未来センター指定管理 市民活動支援業務」でのプログラムの様子

――ただ、学校が地域と密に連携を取るとなると、新しく関係性を作っていく必要がありますね。

山崎:そう、お医者さんと同様に、学校の先生方も多忙な毎日を過ごしています。そこで「地域との連携を~」と急に言われて、現場は「一体どうすれば……」と戸惑っているんです。自治体によっては「学校地域連携コーディネーター」というポジションを作って、学校と地域をつなげる役割を果たす人材を育て始めていたりもします。ここも今後、コミュニティデザイナーが重宝される場所だなと感じています。

デザインの力は、コミュニティも、社会も変えられる

――これから、コミュニティデザインの需要の高まりに合わせて、コミュニティデザイナーを育てて、増やしていく必要性も出てくると思っています。「コミュニティデザイナーとしての適性」を挙げるとしたら、どんな要素がありますか?

山崎:ひとつだけ先天的なもので言うと、できればあった方がいいなと感じているのが「いるだけでその場が少し明るくなる資質」です。「アイツがいるとなんか盛り上がる、安心する」というタイプの人は、コミュニティデザイナーに向いていますね。

“読み書きソロバン”みたいな基本の話をすると、スケジュール管理を上手くやる、ささっとスケッチが描ける、ダイアグラムを作成する……などは、studio-Lのスタッフには求めています。でも、それらは後からいくらでも身に付けられる技術です。「必要な能力は全部付けたけど、どうしようもなく人見知り」とかだと、さすがに本人もしんどいと思います(笑)

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――コミュニティに入っていくことを楽しめて、なおかつ自然と周りの空気を温められる人が、向いていると。

山崎:それが理想ですね。持って生まれた資質が大きく作用する部分ですが、努力でカバーできる可能性もあるかもしれません。うちの事務所にも、鏡を見ながら笑顔の練習をしていたスタッフがいますし。いや、最近になって初めて知ったんですけどね(笑)

――山崎さんのお話を伺って、これからの世の中における「コミュニティデザイナー」の必要性を、あらためて実感しました。

山崎:世界に目を向けると、もっと広い範囲の「ソーシャルなデザイン」にアプローチしている実践者がたくさんいます。それに比べると、日本ではまだ「デザイン」という概念が、限定的なものとして捉えられがちです。

いまデザインを学んでいる方々には、「ものの形だけでなく、社会課題を解決するプロセスだってデザインできる」ということを、覚えておいてほしいなと思います。皆さんが持っている「デザインする力」は、社会の至るところで求められていますから。

いま地域で活動している方々は、ぜひ「楽しくやる」ということを、大切にしてください。 地域が抱えている問題は、どれも一朝一夕で解決できることではなく、継続的な働きかけが必要。そして、継続させるには、楽しさが不可欠です。

“楽しくて続く活動”を作っていく中で「それをどう課題解決につなげていくか」と考えていくと、今までには見えなかった突破口が見えてくるはずです。

コミュニティデザインのサポートツールに

マチマチは、今後とも地域の課題解決のサポートができるよう、サービス向上や「ご近所未来ラボ」での情報発信に努めていきます。地域でのコミュニケーションツールとして、ぜひマチマチをご活用いただけたら幸いです。

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