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ご近所未来ラボ by ご近所SNSマチマチ

ご近所SNS「マチマチ」が運営するブログです。「マチマチ」のお知らせから、参考になるコミュニティデザインの事例まで色々発信していきます!

コミュニティマネージャーは先頭に立つな、共同体を後ろから押し上げる存在であれ――山本倫広さん

コミュニティデザイン 山本倫広 コミュニティマネージャー コワーキングスペース ツクルバ シェアオフィス

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 ご近所SNSマチマチが運営する『ご近所未来ラボ』では、「地域活性や街づくりに携わる方々の力になりたい」という思いから、“コミュニティデザイン”についてのリサーチやインタビューを行なっています。

lab.machimachi.com

今回のインタビュイーは、株式会社ツクルバにて創業当時からコミュニティマネジメントに携わり、2016年11月より浅草にプレオープンした複合施設「ほしや」のプロデュースも手がけた、山本倫広さん(通称「のんたん」さん)です。

ツクルバは「場の発明を通じて、欲しい未来をつくる」というミッションの下、シェアードワークプレイス「co-ba」の運営などを中心に、空間的・文化的なコミュニティづくりを展開する会社です。山本さんはツクルバにて、さまざまな場やイベントの立ち上げに携わり、近年ではコミュニティマネージャーの育成にも注力されていました。コミュニティづくりにおけるプロフェッショナルである山本さんに、これまでのお仕事で培われてきたノウハウや、これからのコミュニティデザインについてのあり方について、たっぷりとお話を伺いました。

コワーキングスペース・シェアオフィスを研究対象にした大学時代

山本さんは大学時代、建築都市工学科に在籍していました。始め、そこでは「宇宙建築」について興味があったそうですが、次第にテーマが「空間のシェア」へとシフトしていったのだとか。一体、どのような心境の変化があったのでしょうか。

「最初は、宇宙に行きたくて宇宙建築を勉強していたんですよ(笑)。その中で、頻繁に『省資源・省エネルギー・省スペース』という言葉が出てきて。宇宙でキープできる居住空間の大きさには限界があるから、どうしてもコンパクトに、そしてエコな作りしなきゃいけない。そうした空間の設計のことを考えているうちに、『空間のシェア』という概念に興味を持つようになりました」

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「人がある空間に集められた時って、そこには必ずと言っていいほど、その場が円滑に機能するような“作法”が生まれるんですよ。そんな場の自然な作用に面白みを感じ始めたら、物理的な建築よりも、もっと文化的な要素までひっくるめた“場づくり”を研究対象にしたいと思うようになったんですね。

住環境のことは、まずシェアハウスや寮の相部屋のプライバシー研究で理解できていたので、今度は“働く”環境にフォーカスしてみるかと。“住む”と“働く”を理解できれば、それは“暮らし”をひもとくことに繋がるなと考えたんです。それで、“場づくり”と“働く”をかけ合わせた結果、『コワーキングスペース・シェアオフィスを研究しよう』という所に落ち着きました」

山本さんが大学生の当時、日本にはまだまだコワーキングスペースが出始めた頃で、研究対象にできる事例も限られていました。そのひとつがツクルバの運営するシェアードワーキングスペース「co-ba」だったと、山本さんは当時を振り返ります。

「僕がコワーキングスペースを研究しようと動き始めた年って、ちょうどツクルバが創業して、co-ba shibuyaがオープンした年と重なっていたんですよ。そこで、最初は研究対象としてco-baの立ち上げ前の空間に出入りさせてもらっていたんですが、そこから少しずつ実務を手伝うようになって、気づいたらそのままツクルバで働く流れになっていました(笑)。ただ、なんとなくお互いに思惑は一致していたんだと思います」

コミュニティマネージャーとしての初仕事は、多世代が集う街づくりワークショップ

山本さんはツクルバでの仕事について「一言で言えば『コミュニティマネージャー』だ」と話しますが、これまで携わってきた実務内容は多岐に渡ります。その中でも、入社2年目に手がけた「調布まちみらい会議」という街づくりワークショップの企画運営が、「今やっているコミュニティマネージャーの仕事のイメージに最も近い」と、山本さんは言います。

「元をたどると、調布で百年続いている建設会社・林建設さんから『次の百年のプロジェクト、地元の街への還元としてコミュニティセンターを作りたい』というご相談が、ツクルバにきたんですね。ただ、僕らは『物理的な場よりも、新しい文化が生まれる場、それを使う人を作ったほうが面白い』と思って。地域のために、住人と一緒に何ができるかと考えて、最終的に出したのが『街の未来について、みんなで考えるオープンセッションを企画する』という結論でした。それが形になったのが、調布まちみらい会議です」

調布まちみらい会議は、“子育て・青春・働く・シニア”という人のライフステージをテーマとし、それを繋ぐ”旅”という5つのテーマで実施されました。そして参加者に「それぞれの住人が、その年齢・ライフステージにある時、この街にどんなライフスタイルがあったらより楽しく健やかに暮らせるか」と議論をするイベントとして、2012年11月にスタート。毎回、地元に住む老若男女と外から集まった参加者が半々のバランスで集まったそうで、「会場は大いに盛り上がった」と山本さんは語ります。

「議論を活かしたアウトプットとして『co-ba chofu』が設立され、このワークショップで生まれた出会いから『Locococi(非営利型株式会社Polarisが運営)』が立ち上がるなど、地元住人に寄り添ったシェアスペースも新たに誕生しました。そして、4年以上経った現在でも、少しずつ形や名前を変えながら『まちみらい会議』が継続的に行われているんですよ。これについては、最初に『自分たちのまちの新しい形、、そこで暮らす自分たちの姿を、自分たちで考え続けること』を目標にしたのがよかったのかと思っています」

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(調布まちみらい会議の様子、2013年)

「もし当初から、会議のゴールを『街の抱えている〇〇の問題を解決しよう』と設定していたら、テーマが限定的すぎて、多世代が継続的に集まる場にはならなかったと思います。コミュニティマネジメントにおいて、最初の目標設定がとても重要だということを、この仕事から実感しました」

コミュニティマネージャーは、“リーダー”ではない

山本さんは「調布まちみらい会議」の他にも、ツクルバの外部で数多くのコミュニティの立ち上げ、運営に携わってきました。そのかたわら、内部では「co-ba」のコミュニティマネージャーとして、後続を育てる取り組みも展開しています。


「co-baには『1拠点にコミュニティマネージャーを1人置く』というルールがありました。ただその増やし方が、適した人をピックアップするという“奇跡待ち”みたいな方法だったので、安定性がなくて。そこに危機感を覚え、ナレッジの集積と共有を目的として研修を始めたんです。これを機に、少しずつコミュニティマネージャーの役割や適性を、言語化できるようになって、ナレッジを他の人に伝えることが出来る様になってきました。直近では、自ら立ち上げたco-ba schoolにて『コミュニティマネージャー養成講座』の企画・講師を務めています。ようやく念願のコミュニティマネージャーの育成と重要性の啓蒙をやり始めた……って感じです」

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(co-ba school「コミュニティマネージャー養成講座」参加者との集合写真@ほしや)

コミュニティマネージャーは、人の集合を相手にする業務です。人や場所の組み合わせが変われば、適切なやり方だって変わるもの。山本さんは「コミュニティマネジメントは属人的でマニュアル化するのが難しい仕事」と前提を置いた上で、次のように役割を説明してくれました。

「コミュニティマネージャーって、リーダーのように先頭に立って、みんなを引っ張っていくポジションではないんです。フォロワー的にみんなの後ろに付きながら全体を押し上げていく役割だと考えるのが適切だと、僕は考えています」

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(写真上/集団におけるリーダーのポジション、写真下/コミュニティマネージャーのポジション)

さらに、山本さんはコミュニティーマネージャーの向き、不向きについても言及していきます。

「この役割を踏まえて考えると、コミュニティマネージャーにとっての適性が、いくつか見えてきます。まずは、他人とコミュニケーションを取ることが苦にならない人。人と人をつないだり、教えたりするのが得意な人も向いてますね。性格的な部分まで言ってしまえば、明るい人の方がよいでしょう。ただ、これらはあくまで僕が思う適性の目安の一部であってケースバイケース。色んなコミュニティマネージャーがいてこそ面白いんです。そして、僕が重要だと思っているのは、パーソナリティを大切にすること。なので、自分には“向いてない”と決めつけないでくださいね」

上記のように、コミュニティマネージャーにおける適性をいくつか列挙していった山本さんですが、「中でも、これが最も大事かもしれない」と感じている要素があると続けます。

「ホスピタリティの程度――すなわち“相手への想像力がどれだけ働くか”は、コミュニティマネージャーにとって非常に大切な資質だと思っています。『いまのやり取りはこの人がちょっと嫌がっているかも』と人の気持ちをその場で感じとってフォローしたり、『これはあの人が気に入りそうだ』と先読みして情報提供したりすることは、コミュニティを支える立場に不可欠な行動です。そういった気遣いの原動力になるのが、相手の立場になって、相手のために何ができるかを考える“ホスピタリティ”の精神なんですよね」

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コミュニティマネージャーに対する、世間一般の認識

最近では地方でも都会でも、地域が抱えるさまざまな問題の打開策として「コミュニティの再構築」が提唱される機会が増えています。そんな時流に乗って、コミュニティマネージャーの需要は高まっています。山本さんも「ニーズの高まりは肌で感じる」と認める一方で、「コミュニティマネージャーに対する世間の認識を変えていかなければ」と、問題意識を感じているそうです。

「コミュニティマネージャーは近年新しくできた・認識された職業概念であり、まだまだ社会的な地位を保証されていない立場です。知らない方々から見ると『専門性がなくてもできて、人とワイワイする楽しい仕事』と捉えられることも少なくありません。もしかしたらツクルバの内部でもそう見えているかも、だって僕らが楽しそうだから(笑)」

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「ただ、実際の業務は、見えないところでの事務作業もたくさんありますし、極まった専門性というよりは、100人の専門家と相対することができる幅広な知識と興味が求められます。その上、自身はコミュニティやコミュニケーションの専門家として、日々起こる大小さまざまな問題に対して適切な処置を施していく、とてもセンシティブな精神労働でもあります。たしかに、向いている人にとってはエキサイティングで楽しい仕事ではあると思いますが、毎日本当にたくさんの人とケースバイケースで解を模索していくので、苦労も結構多いんですよ」

また、こうしたコミュニティマネージャーに対する認識のズレは、人材不足にもつながっていると山本さんは指摘します。

「コミュニティマネージャーの需要は高まっているものの、前述の様にその業務の難しさや重要性がほんとの意味で理解されていないから、なかなか待遇が上がらない。残念ながら僕の周りでもぶっちゃけそうです。それに、『内訳:コミュニティマネジメント料』では、対価を請求しにくいため、数字で見せ難いのが現状です。だから、本来ならばコミュニティマネージャーの適性があるようないい人材が、今は必然的に他の職業に流れていってしまっているんですよね。こうした風潮をどうにか打開するためにも、『コミュニティマネージャーがどういう存在なのか』を、個人的も発信し続けていきたいと思っています」

明確な資格のないコミュニティマネージャーに必要なのは、“想像力・理解力・許容力”

最後に、これからコミュニティづくりを実践したいと思っている人たちに向けて、どんな意識を持って臨めばいいか、アドバイスをお願いしました。

「先ほどの適性の話でも出しましたが、まず“想像力”を持つこと。それに加えて、自分とは異なる人とわかり合う“理解力”、違いを認めながら受け入れる“許容力”が必要だと感じます。
コミュニティマネージャーの責務は『自分が理想とするコミュニティをつくること』のではなく、どちらかと言えば『そこにあるべきコミュニティが、自然と形作られるサポートをすること』です。人が集まるきっかけをつくり、集まった人たちが、その人たちにとって必要なコミュニティを形成し、持続させられるように見守っていく――この一連の流れを考えていくのがコミュニティデザインであり、実際に継続的にサポートに当たっていくのがコミュニティマネジメントなんです」

一息置いて、山本さんは次のように言葉をつなぎます。

「本気でコミュニティづくりに携わりたいと考えている方は、まず“自分の理想のコミュニティ像”を一旦捨てること。そして、まず自分自身がそこにいる他者を理解し受け入れられるかを、今一度自らに問い直してみてください。繰り返しになりますが、コミュニティマネージャーはリーダーではありません。コミュニティやその成員にとっての居場所・バッファであり、心地よい成長を促すアクセラレーターです。そうした意識が定着した頃には、あなたが属しているコミュニティは、きっとそれぞれにとって居心地のいい場になっているはずです」

f:id:tks-west:20161222010813j:plainコミュニティづくりを志す人に対して、「自分の理想のコミュニティ像を捨てろ」という山本さんの指摘は、街づくり・地域づくり・場づくりの本質を的確に突いた、金言だと感じました。私たちマチマチも、その地に住む一人ひとりの求めるコミュニティが自然とでき上がる場になるよう、これからも歩みを止めずに考え続けていきたいと思っています。

コミュニティマネージャーという仕事に興味がある方、やりながら悩みを抱えている方は、山本さんが講師を務める「コミュニティマネージャー育成クラス」をチェックしてみてください。2017年の2月より、co-ba school内にて第二期が開講される予定です。

「コミュニティマネージャー育成クラス」詳細はこちら↓

tsukuruba.com

地域でのコミュニティづくりに、ご近所でマチマチを使ってみる

マチマチでは今後も引き続き「コミュニティデザイン」にまつわるリサーチ・インタビューを継続的に行なっていきます。ぜひ、チェックしてもらえたら幸いです。「地域でコミュニティを作って盛り上げたい」と考えている方は、マチマチを使ってみてくださいね。

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