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コミュニティが「勝手に育つ」環境をデザインするーーgreenz.jp編集長 / NPOグリーンズ代表理事 鈴木菜央さん

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ご近所SNSマチマチが運営する『ご近所未来ラボ』では、「地域活性や街づくりに携わる方々の力になりたい」という思いから、“コミュニティデザイン”についてのリサーチやインタビューを行なっています。

今回のインタビュー企画では、greenz.jp編集長 / NPOグリーンズ代表理事 鈴木菜央さんにお話を伺いました。

「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」をめざすグリーンズで、「ほしい未来をつくる」さまざまな事例や人、組織などを紹介してきた鈴木さん。そのなかには地域コミュニティをはじめとしたさまざまなコミュニティの事例も存在し、メディアを通してたくさんのコミュニティ作りについての知見も蓄えてきました。

そんな鈴木さんは2013年に千葉県のいすみ市に移住。一住民として地域コミュニティでさまざまな働きかけや活動を行なっています。studio-Lの山崎亮さん浅草の複合施設「ほしや」のプロデュースを手がける山本倫広さんのように、外部から地域コミュニティにアプローチするのではなく、地域に入り込んで内部から働きかけをしている鈴木さん。そこにはどのような苦労や楽しさ、そして学びがあるのでしょうか。

子どもと家を起点に選んだ、移住という選択肢

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そもそも、鈴木さんはなぜ移住を決意したのでしょうか。鈴木さんは、大きく2つの理由があったといいます。

「1つは子育ての問題です。妻も僕も“地元”と呼べる場所で、ご近所さんと関わりながら子育てし、暮らしていきたいと考えていました。しかし、自分自身は都会で育ったものの、東京を“地元”と思えるほどの帰属意識を持てていませんでした。同様に、田舎出身の妻にとっても、東京は自分の帰る場所ではない。だから、子育てをするなら東京ではなく、新たな“地元”となるまちを見つけたいなと思ったんです。できれば、子どもたちが自然の中を走り回って、のびのびと育つような。

もう1つは家の問題。家を探し始めた2008年ころは世田谷区に住んでいたのですが、家が高すぎて買えないんです。賃貸で居続けるならなんとか安いところを探せるものの、家を買って住むイメージができなかった。こういった理由から、小学校にあがる前に移動しようと決めて、上の子が3~4歳の頃から移住先を探し始めました」

移住を決意した後、鈴木さんは自分たちが住みたい場所の条件を整理。様々な候補地を実際に自分の足で訪ねて行ったとのこと。

さまざまな場所を訪ねて残ったのがいすみ市だった

「東京から1時間半以内で、自然がいっぱい残っていて、里山や里海があるところ。かつ、人があたたかくて、土地が安い。そして、移住者に寛容であること。これが僕の条件でした。鎌倉や逗子、奥多摩、成田、栃木など…。さまざまな場所を実際に訪ねて、時には泊まったりもしました。そのなかで残ったのが、いすみ市だったんです」

千葉県、房総半島南部に位置するいすみ市は、東京から電車で約1時間半前後の海沿いの街。館山や南房総、金谷などに比べると、移住先としてはあまり知られていないこの場所に鈴木さんはどのような魅力を感じたのでしょうか。

「いすみ市は当時から移住促進に力を入れていて、地元の人たちが移住者に対して寛容だと感じましたね。そういう空気感なのか、東京を拠点に活動するCMディレクターや映像の特殊効果の専門家、写真家、音楽家など、クリエイティブな仕事に携わる人たちがちらほら住んでいて。土地も安いし、東京にも比較的出やすい。何度か通ううちに、『ここよくない?』となったんです」

『あれ、東京より進んでない?』と素直に驚きました 

移住先が決まり準備を整えるなか、鈴木さんは何気なくSNS上でいすみ市に引っ越すことを伝えます。すると、全く知らないいすみ市の方から連絡があったとか。

「Twitterで『いすみ市に引っ越します』とつぶやいたところ、知らない人から「何月何日に歓迎会をやりますが、いますか?」とリプライがきたんです。いすみ市は移住者のネットワークが強く、前後1ヶ月くらいの間に移住してきた人たちを、先輩移住者の方々が歓迎してくれました。『あれ、東京より進んでない?』と素直に驚きましたね。まだ2010年頃の話です」

地元コミュニティからも歓迎され、移住してすぐ地域との関係性を築きはじめたのかと思いきや、鈴木さんが地域コミュニティと本格的に関わるようになったのは、移住後3~4年経った後からでした。

「移住した当初は仕事が忙しく、地元に帰る時間をとれない時もあったくらいでした。そのあとには東日本大震災が起こり、自分自身も腰を悪くしたり、喘息がひどくなったりと、体調が悪い時期が続き…。しばらく、地域に目を向けられる状態ではない期間が続きました」

小屋を建て、新しい人間関係を収穫する

その後、徐々に体調や仕事の方も落ち着きはじめたのが、2013年頃。そこから再び地域のことに目を向けられるようになっていったと鈴木さんは振り返ります。

「状況が落ちついて来た頃から、少しずつ暮らし方や生き方を練り直そうと思いました。一番大きく変化させたのは家です。当時は賃貸に住んでいたのですが、自分たちの土地を買い、手に入れるコストも生活コストも抑えられる小さな家『タイニーハウス』に住もうと考えたんです。タイニーハウスであれば暮らし全部が小さくなることで、環境への負荷も減り、自分たちの支出も減る。生まれた余裕で、ありたい自分になるために勉強したり、家族と過ごしたり、地域との時間を作ったりできるだろうと考えました」

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家を変え、暮らしを変える、一連の変化の後、鈴木さんは徐々に地域の活動に参加するようになっていきます。その中でも鈴木さん自身が主体となり家づくりを起点にした用意した地域と関わる仕掛けが『小屋づくり』でした。

小屋作りに参加してもらう

「タイニーハウスと別に小屋を建てたんです。まずミニマルライフやタイニーハウスなどの情報発信を行い、ウェブメディア『未来住まい方会議』を運営する『YADOKARI』のチームに相談して、小屋を設計。その後、実際に建てるプロセスをオープンにして、みんなで小屋を作り、つながりを作るという立て付けにしたんです。わざわざ小屋をつくるために、いすみ市だけでなく各地から人が集まり、自分と共通の興味を持つ友人を見つけることもできましたし、通りがかりの人と『何を作っているの?』といった会話も広がりました」

プロセスをオープンにし、小屋を建てることを通してコミュニケーションを生みだした鈴木さん。この仕組みは地域で横展開され、自分の家を直したりお店を作ったりする時に仲間を募っている人も現われてきているといいます。

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「もちろんプロに頼んで小屋を建ててもらう方が早いでしょう。でもプロセスをオープンにしてみんなで作ることで、友達も増えますし、みんなの学びも深まる。みんなで建てれば一人ひとりの大変さも軽減されますし、地域の人との関係性も強くなりました。このプロジェクトを通して、僕は新しい人間関係を収穫できたと考えています。今でも、作りに来た仲間は、近くに来た時に寄ってくれます」

この小屋作りから、鈴木さんは地域のコミュニティと徐々に関係性を築きはじめ、地域の消防団に入ったり、お祭りに参加したりと、既存の地元コミュニティへも積極的に参加するようになっていきます。

誰かの可能性を引き出し、関係性を深めた『地域通貨』

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小屋につづいて地域の繋がりを生む仕組みとして手がけたのが『地域通貨』です。地域通貨は、ご近所同士など特定のコミュニティ内で手助けをしあう際にやり取りされる擬似的な通貨のこと。国内では、相模原市旧藤野町(現相模原市緑区)の「よろづ屋」や、東京・国分寺の「ぶんじ」などが知られています。ウェブメディア「greenz.jp」の活動を通し、さまざまな地域通貨の事例を見てきた鈴木さんは、どのように地域通貨をいすみ市に展開していったのでしょうか。

「2000年ごろからの流行の影響もあり、地域通貨には元々興味がありました。とくに藤野の『よろづ屋』の事例はgreenzで取材した中でも特に印象深かった。そこから自分の移住をきっかけに、地元で地域通貨をやってみたらどうかと考えはじめ、2015年の頭頃から準備をはじめました。まずはいきなりやってみるのではなく、藤野の人に声をかけ、「グリーンズの学校」として地域通貨を学ぶクラスを開講しました。

僕は主催するとともに受講生としても参加して、フィールドワークや課題をこなし、徐々にいすみ市で地域通貨を広げていくイメージをしていきました。そのあといすみ市の知人を地域通貨のクラスに誘い、彼の受講が終わったタイミングで『おもしろいでしょ?一緒にやろう!』と声をかけ、2人を起点に地域に広げ始めていきました。地域通貨の名前をみんなで話して決め、『米(まい)』という単位になりました。まだ街全部はカバーできていませんが、クルマで15分くらいの範囲の移住者を中心に60家族80人に広がってきています」

助け合いを活性化する地域通貨

いすみ市で現在鈴木さんが展開している地域通貨は取材当時(※2017年2月)はテスト運用中で、通帳はコンビニでコピーした紙を使った簡易的なもの。参加するためには、仕組みの説明を受け、メーリングリストとFacebookページに登録してもらい、通帳のPDFファイルをもらうだけ。あとは自分で通帳をコピーし、取引をする時に、日にちと金額、残高を記入して使っているそう。

「たとえば『高圧洗浄機貸してくれませんか?』とか『車を車検に出しちゃったから駅まで送ってくれませんか?』とか『旅行中に犬の散歩に行ってくれませんか?』とか。我が家も、飼っているにわとりに餌をやりに来てもらったり。地域通貨を通してお互い気軽に助け合える関係ができてきています。

ちなみに僕は初日から残高がマイナスです。(笑) むしろずっとマイナス続きなんですが、マイナスは誰かの可能性を引き出したということなので、何も悪くありません。マイナスであれば誰かのために、自分が役に立てることも考えます。するとお互い暮らしやすくなりますし、気持ちもあたたかくなりますよね」

地域通貨が入ることで、相談できる関係性が活発に

助け合いを活性化している地域通貨。現在は助け合いだけでなく、月に1回イベントを行ったり、みんなで映画を見たり、地域通貨だけが使えるマーケットを開催するなど、地域での役割は徐々に広がってきているとのこと。鈴木さんは実際に地域通貨を取り入れたことによる変化を次のように語ります。

「お金は『精算する』といいますが、精算しているのは、金銭ではなく、関係性なんです。完全に遠い関係は、お金で精算するの方が楽なのに対し、近い関係はなにも必要ありません。地域通貨はその間に広がることで、スムーズな関係性を築く役割なんです。

地域通貨が入ることで、お金や地域通貨などの媒介がない場でも、相談できる関係性が活発になりました。すでに友達だった人とは関係が深くなりましたし、友達じゃなかった人とも友達になれた。お金は便利ですが、それとは違うルートで自然の恵みや人とのつながりにアクセスできるルートを作るのが地域通貨の役割です」

現代社会は孤立するシステムになっている

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小屋作りや、地域通貨。鈴木さんが地域の活動を通してコミュニティを活性化したいと考える裏にはどのような課題意識があるのか。鈴木さんはそれを『孤立』だといいます。

「現代社会は孤立するシステムになっているんです。とにかく、稼がないといけないから。家賃も、電気代もスマホ代も払わないといけないですし、忙しいから外食も増える。そのなかで、地域の人となにかやるとか、盛り上げるとか、そんな余裕はありません。

みんな忙しいから地域の課題もサービスを頼んでお願いする。同様に治安は警察が、街のことは区役所がやることだと考えて、どんどん『暮らしのお客さん』になっていく。すると、地域に対しても主体性がなくなりますし、誰ともつながる必要もない。だから孤立してしまうんです。

孤立すると、子育ても夫婦だけででやらなければいけません。でも共働きせざるを得ないから、ありえないほど大変。昔は親戚や近所の子の面倒をみたり預かったりして、みんな、親になるまでの練習がいっぱいできたんです。そういう斜めの関係もないから、親になるのって、ものすごいプレッシャーです。

そういう意味では、昔はコミュニティの中で、生まれてから死ぬまでのさまざまなことの練習がありました。婆さんが亡くなり、葬式のあげ方を見て、それを手伝ううちに自分も喪主になり、最後は自分の番が来る。でも今はみんな孤立しているから、葬式のあげ方すらGoogle検索しないといけない。それって寂しくないですか?」

田舎に行けば人と繋がれるわけじゃない

『孤立』するシステムに抗おうと、いすみ市に移住して地域の活動に携わる鈴木さんですが、移住したからこそ改めて感じたのが、「田舎に行けば人と繋がれるわけじゃない」ということ。

「たとえ田舎に移住したとしても、それだけでは人とつながることはできません。都会と同じ仕事、同じ働き方をしていたら、むしろひどくなる。都会だったら、友達もすぐに呼び出せますが、田舎はそうもいかない。近所でもっと仲良くなる仕組みが必要です。田舎がみんなつながっているというのは幻想ですし、都会だとつながれないということもないと思います」

一人ひとりの孤立を生み出す構造になっている現代社会では、孤立しないための仕組みが必要です。「青年団を作ろう」といった旧来の仕組みがはまる場所もありますが、それだけで今の孤立を解決できるかというと、必ずしもそうではありません。今の時代に合わせた新たな仕組みを試していくことが必要です。

「いまは孤立を感じている人がつながりたい時につながれるために、時代にあった新たな仕組みが必要になってくると考えています。海外ではコミュニティに関する様々な事例が徐々に増えてきていますし、マチマチも1つの手段だと思います。既存のSNSではどこに住んでいる人という情報はわかりますが、地域の人でフィルタリングして、コミュニケーションをとる仕組みはありません。

他方で地域通貨でつながる人はもっと関係性が近い。マチマチは、その真ん中くらいの関係性を生み出すのによいのかなと。友人ではないけど、同じ地域に住んでいて情報交換できる関係性というのはニーズがあると思いますね」

コミュニティが勝手に育つ環境を用意する

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つながるための新たな仕組みが必要となると鈴木さんが語るように、今後コミュニティの力はさらに重要視されていくと考えられます。ただ、一口にコミュニティといってもその性質や構造、役割はさまざま。では、コミュニティを構成していく要素を細分化していったとき、もっとも大事になってくるものは何になるのでしょうか。

「それは、コミュニティを作る存在。コミュニティをデザインする役割の人だと考えています。ただ、コミュニティは一人ではできません。妄想する人、言い出しっぺ、言い出しっぺと一緒に踊る人、まとめる人、手伝う人、盛り上げる人。つなげる人。いろんな人がお互いを活かし合うつながりができていく、そんなイメージです」

では、コミュニティをデザインする人は、どのようにしてコミュニティを生み出していけば良いのか。まずは手法を伺いました。

“コミュニティ性”はあらゆるものに入れ込める

「コミュニティの要素、いうなれば“コミュニティ性”は、あらゆるものにすでにあるし、入れ込めると思います。建築にも、土地所有にも、仕事の仕方にもです。そして、コミュニティ性を足していった時に、既存の常識から考えられないようなさまざまな収穫が取り出せる可能性がある。

イギリスでは不動産の値段がすごく高いので、土地を数人で共同購入しセルフビルドで家を建てるコミュニティビルドという考え方があります。セルフビルドは大変なので、家をコミュニティで建てるんです。この手法では、たとえばコミュニティにA~Fと6人がいたとしたらAさんが家を建てる時は、B~F全員が手伝います。

同様に繰り返していくとFさんが建てる頃には建て慣れてくる。その分譲地ができ上がる頃には、コミュニティの関係性もとても強固なものになるなわけです。日本でもコミュニティビルドを実践しようとしている人がいますし、そういう人たちがたくさん現れてほしいと思っています」

楽しいからやっていることが、いつの間にか成長につながる

そして最後に、コミュニティを生み出すための大事にすべき考え方を伺いました。

「引っ張るんだけど、引っ張りすぎないこと。最初はある程度やっても、適当に役割を回していくことが必要です。僕が地域通貨をはじめるときに友人を誘ったのは、僕が一点集中でリーダーになるのが良くないと思ったからです。だから弱みも見せます。『僕ここはできるんだけど、これはできないんだよね』とか、『忙しすぎるから、誰かこれできない?』といった具合に、どんどん振ってお願いするんです。

植物や農園を作っていくイメージで、勝手に育つ環境を用意するんです。みんなが楽しいからやっていることが、いつの間にかみんなの成長につながって、いつの間にかつながりや関係性の強化になり、いつの間にか広がる――という状態を作る。楽しさや、友人関係が豊かになる充実感、地域や自分より大きな存在の役に立つという気持ち。そういうのが満たされる場であれば、あとはそんなに突つかなくても膨らんでいってくれます」

 

実際に移住し、「いすみ市」という地域の一当事者としてコミュニティを盛り上げている鈴木さん。プロセスをオープンにした小屋作りや地域通貨など、様々な仕掛けを通してコミュニティを育てる方法は参考にできる部分が多いはず。

他方で、実際に地域で活動する鈴木さんが語る「田舎がみんなつながっているというのは幻想ですし、都会だとつながれないということもありません」という言葉は非常に印象的でした。コミュニティ作りに都会も地方も関係ない。自分がいまいる場所でも、できることから始めてみることこそ、が地域を変える第1歩につながるはずです。

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