「まちの保育園」と“まちの書店”「本屋 B&B」が目指す、まちを喜ばせる「場づくり」って?

 

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昔から街に存在していた施設や機能に、改めて”まち”とのつながりが求められるようになってきています。2017年5月11日には、その流れをさらに強く感じるイベント「“まちの保育園”と“まちの本屋”が語る、あたらしい場のつくり方」が開催されました。

これからの保育園のあり方として熱い注目を浴びる「まちの保育園」を運営する松本理寿輝さん(ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役社長)と、‟これからのまちの本屋”を目指す「本屋B&B」代表・内沼晋太郎さん(numabooks代表)が、「あたらしい場のつくり方」をテーマに対談。まちづくりや保育に興味を持つ、多くの人々から注目を集めました。

松本理寿輝さんと内沼晋太郎さんは、共にまちにおける新たな“場づくり”をけん引する存在です。松本さんは、先日「まちの保育園」についてまとめた著書「まちの保育園を知っていますか」を出版されました。お二人は、実は中学~大学までの同級生ということもあり、和やかな雰囲気で対談が行われました。

子育てに関わるあらゆる人のための保育園をつくりたい

まずは内沼さんから松本さんへ、これまでの取り組みや、その背景にある理念を確認していくことからスタート。

松本さんが代表を務めるナチュラルスマイルジャパンが運営している「まちの保育園・こども園」は、東京にある認可保育所。小竹向原、六本木、吉祥寺、代々木上原などの街で、特色ある保育を行っています。「コミュニティコーディネーター」なる専任職員がいる、各園に地域と保育園をつなぐカフェやスタンドがある、毎日の活動を子ども自身が話し合って決めるなど、様々な特徴があります。

注目を集める「まちの保育園」を立ち上げた松本さん。大学時代に児童養護施設でボランティアをしたことがきっかけで、保育や教育に関わりたいという夢を抱きます。卒業後は一度に就職。会社で働きながら、早く自分が目指す道を進まなければいけないという焦りを感じていたのだといいます。

松本さん:内沼さんが早々に会社に見切りをつけ、目指す道をを歩み始めたのをみて、俺も早い段階で動かなきゃと感じていました。 もちろん会社から学べることはたくさんありましたし、仕事はすごく楽しかったんです。ただこれを一生やり続けるのは違うなと思っていました。

f:id:MegumiHarada:20170603092622j:plain「まちの保育園」を運営する松本理寿輝さん(ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役社長)

自分の道を、まちぐるみでこどもを育てる保育園の経営に定めた松本さんでしたが、まずは経営や起業を、実務を通して学びたいと思い、駐車場の空中空間を活用する建築企画会社を設立。数年後、いよいよ保育園の経営に着手します。しかし、その道のりは簡単なものではありませんでした。

松本さん:認可外の保育園は、保護者の負担がとても大きくなります。子どもだけでなく、保護者も含めたみんなのために作りたかったから、認可保育園を目指しました。ただ、認可のハードルはかなり高いんです。当時は、原則として認可保育園の運営実績があることが応募の条件になっていることがほとんどで、自治体へ応募することすら苦労する状況でしたが、練馬区にだけ応募でき、1園目を東京都認証保育所として設立することができました。厳密には認可保育園ではなかったものの、認可外に比べてだいぶ保護者の負担を抑えることが可能になりました。

なんとか1園目をスタートさせた松本さんたち。その後、1園目の実践を見て声をかけてくれた方からのご縁や、メディアなどに取りあげられたこともあり、2園目の六本木園、3園目の吉祥寺園が開園しました。

まちから喜ばれる“場”をつくる

「まちの保育園」では、独自の取り組みが数多く行われています。特にユニークなのは、保育園といっしょに、地域の人が集まるカフェやコミュニティスペースを設けていること。その理由について、松本さんは次のように話します。

松本さん:‟教育”というテーマを考えたとき、まち全体を見たいと思ったんです。学校単体で教育を考えるのではなく、社会全体で教育を考えるという感じですね。

そこで、まちとの接点としてカフェを設けました。こどもたちの学びの資源を地域全体に広げつつ、保育園自体も地域をつなぐ拠点になれるのではないかと考えたからです。

f:id:MegumiHarada:20170603092654j:plain「まちの保育園 小竹向原」に併設されているカフェ、「まちのパーラー」の様子。

持続可能なまちにしていくために、まちからも喜ばれるものをつくっていく。それは、本屋B&Bにとっても、近い考え方だと内沼さんは言います。

内沼さん:僕たちは、“これからのまちの本屋”のビジネスモデルを作りたいと考えています。中には昔ながらのまちの本屋が好きだという方もいますが、そのビジネスモデルではもう継続させることが難しい。僕たちは、よい本を選んで売るというところにコストをかけるためにこそ、ビールを出したり毎日イベントを開催したりして、相乗効果を狙っています。僕たちが集客装置になることで、下北沢を訪れてくれる人もいます。知的好奇心の渦の中心のような役割を担うことで、まちに還元していきたいんです。

f:id:MegumiHarada:20170603092733j:plain「本屋B&B」代表・内沼晋太郎さん(numabooks代表)

今の地域における大きな課題として、松本さんは高齢者世代と若者世代のコミュニケーションの断絶をあげます。高齢者同士は町内会や自治会のネットワークでつながるものの、若者と交流する機会はなかなか持ちづらいという現状があります。

その点、保育園には毎日のように、若い母親や父親がやってきます。保育園の特性として、保護者の状況を理解したうえで日々子どもに向き合っているため、高齢者と若年層を繋げる媒介役を務めやすいということがあるのだそうです。「まちの保育園」では、コミュニティコーディネーターという役割を設けて、地域のネットワークを育み、多世代や街全体がつながりあう仕組みづくりを目指しています。

こうした「まちの保育園」の仕組みを求めているのは都心部だけではありません。「まちの保育園」ではアライアンス制度というものを設けています。この制度では、“子ども主体の地域ぐるみの保育”を深めている事業者同士が学び合いの関係性を築いていくことを目指しています。

「全国どこでも『保育園』がまちの拠点になる可能性があり、互いにその取り組みを学びあいたい。」その想いを胸に、松本さんたちは様々な場所に出向いているといいます。

自分たちが好きなものを大切にする姿勢が、子どものクリエイティビティを育む

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実は互いに幼い子供の父親でもあるお二人。話は、これからの子育てにおいて大事にしていきたいことに広がりました。

松本さん:これからの時代で大事なのは、自ら発想し、創意工夫できる力だと考えています。例えば、「あなたはどう思う?」と子どもたちに伝えること。そこでは明確な答えを求めているわけではありません。自由な発想で、その子が大事にしていることを尊重してあげる。

それから、信頼できる多様な出会いを持つことが大事だと言われています。自分の価値観のベースをつくるのは、だいたい0歳から6歳のときに出会った人だされているんです。。たくさんの人に出会えばいいというわけでなく、「好きだな、面白いな、かっこいいな」と思える、信頼できる人との出会いをたくさん作っていきたいですね。

内沼さん:本も同じかもしれません。子どもが本を読むようになるには、大人である自分たち自身が楽しそうに読んでいる姿を見せるということが一番いいと言われます。自分が実際に読んでいいなと思う本を置いて、それを楽しむということが大事だなと思っています。

「まちの保育園」を誰もが実現可能なモデルにしたい

「まちの保育園」をスタートして3園の運営を手掛けるだけでなく、アライアンス制度など新しい活動にも取り組んでいる松本さん。これからは、今までやってきたことを標準化していく時期だと話します。

松本さん:まちの保育園が出来て最初の5年間は、‟文化創造期”と言っていました。どうやって子ども主体のまちぐるみの保育という理念を実現していくか、ということを手探りで探してきたんです。この次の5年間は、‟標準化期”と呼んでいます。私たちだけができるモデルではなく、誰もが実現可能なモデルにしていきたい。結果として、子どもたちの教育や育ちの質向上につながり、保育園がまちづくりの拠点に繋がればいいなと考えています。

また、0~6歳児が対象となる保育園だけでなく、小学校の役割の変化にも興味を持っているのだそうです。

松本さん:2018年から小学校を規定する学習指導要領が改定され、小学校もまちづくりの拠点になることが求められます。小学校自体が地域の拠点になり、教育の質を地域とともに育んでいけるような、学校のまち化にも関われるといいですね。

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 最後には、会場からの質問タイムが設けられました。

実際に保育園の開設準備を進めているという方からは、「まちを巻き込んでいく際のポイントは?」という質問が上がりました。それに対し松本さんは、こう回答しました。

松本さん:地域とのコミュニケーションで重要なことは、効率さよりもマメさ。急がないことが大事だと思うんです。僕たちもまずは保護者、保育者、子どもの信頼関係を第一に、じっくりと保育園の体制をつくることに注力します。その間に地域の人たちに、こうした子どもの姿や、保育園の活動を伝えていく。そこから徐々に関係性が広がっていくと考えています。


松本さんと内沼さん、お二人のお話からは、保育園や本屋、様々な施設が、まちの拠点になる可能性を秘めているということを知ることができました。お二人の話からは、どんなジャンルにおける“場づくり”に取り組む方にとっても、ヒントが得られるはずです。

自分たちの目指すべきものを理念を持って進めるとともに、大切なことは、「まちを豊かにしていくために、自分たちが何ができるか」ということ。その両輪のバランスを取ることに対し、お二人が真摯に向き合う姿勢が印象的でした。

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