「暮らしの保健室」ってどんな場所?川崎市の「プラスケアプロジェクト」が目指す地域医療のあり方

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家族が病気かもしれない、最近体に不調を感じる。そんなときに、1人で悩むのは心細いですよね。もし、ご近所に気軽に立ち寄れて、悩みを話せる場所があるとしたらきっと心強いはず。

今注目を浴びている「暮らしの保健室」は、「ちょっと誰かに相談したい」という人が安心して訪れることができる場所をつくる取り組みです。名前のとおり、街の中にある「保健室」のような場所として、全国各地で展開されています。

神奈川県川崎市では、まちづくりと地域医療を掛け合わせ、「病気になっても安心して暮らせることのできる街」づくりを目標に掲げる「プラスケアプロジェクト」が発足しました。

「医療と地域コミュニティがつながる場所」って、どんなところなんでしょうか?ご近所未来ラボ編集部がお邪魔してきました!

病気になっても安心して暮らせることのできる街を目指して

「暮らしの保健室」があるのは、元住吉駅にほど近い住宅街の中。賑わいを見せる商店街を抜けていくと、静かな住宅街が広がります。

 

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少し横道にそれると、お洒落な雰囲気のカフェが見えてきました。

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この「イダカフェ」は、日替わりで様々な企画が行われているコミュニティカフェ。天井からは光が差し込み、室内はとても明るい雰囲気です。

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「暮らしの保健室」は、毎週水曜にイダカフェのスペースを借りて行われています。10時~16時の間、看護師が常駐しており、何でも相談することが可能。

この日は、「暮らしの保健室」に関心を寄せる地域団体の方や、以前イベントで活動を知った方などが立ち寄られ、コーヒーや紅茶を飲みながら、ゆっくりと時間を過ごしていました。毎回、10名弱の方が訪れ、相談をされていくのだそうです。

地域コミュニティの中に、医療や福祉の“架け橋”をつくる

この「暮らしの保健室」は、プラスケアプロジェクト代表の西智弘さんが中心となってはじまりました。

 

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プラスケアプロジェクトは、まちに暮らす人々自身が自分の健康を守ることをサポートする団体です。川崎市中原区を中心に展開しており、家族の代わりに看護師が病院に付き添う「ナースサポートサービス」や、医師が直接相談に応えてくれるメールサービスなど、暮らしの保健室の他にも様々なサービスを行っています。

www.kosugipluscare.com

西さんは、日本に緩和ケアが広がる前から、数少ない緩和ケア専門医として、長年治療に関わってきました。しかし、緩和ケアを行う中で、自分たちが行う医療に限界を感じていたのだと言います。

西さん:「患者さんの終末期だけを診ていても遅い」と痛感しました。実際に病気になってしまったら、「どう生きたいか」ということや、家族や周囲の人々と繋がりを作ることは難しい。終末期になる以前に、ひとりひとりが考えておくことが重要だと気付いたんです。

日常生活の中で、人々と医療・福祉との繋がりを作ることが、今後の緩和ケアのポイントになると考えた西さん。地域コミュニティの中に、医療や福祉の橋渡しとなる拠点づくりを行うことを決意します。

こうして生まれたのが、誰でも医療や健康について相談できる「暮らしの保健室」です。2016年から開始し、当初はイベントにを中心に出店。「1day暮らしの保健室」というかたちで不定期に活動を行ってきました。2017年4月からはイダカフェを中心に、定期的に開催しています。

悩んだら、気軽に来れる場

「暮らしの保健室」には、看護師の渡邊麗子さんが常駐しています。「暮らしの保健室」を訪れる人はまず、渡邊さんとお話をすることからスタートします。

 

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渡邊さん:「暮らしの保健室」には、主治医の判断はこれでいいのかとか、一見明確そうに見える悩みを持った方が来られます。でも、実際に話したいことは、そうではないことも多いんです。

例えば、先日「暮らしの保健室」で数時間話されていった方がいたそう。最初は「この病気の治療はこれでいいのか」という具体的な相談でしたが、話していくうちにその奥に隠された感情が見えていきました。

渡邊さん:「家族が病気で変わってしまうことが怖い、でも家族だから何とかしてあげなくちゃいけない」という不安があることがわかりました。話の最後に、ようやく本当に伝えたかったことがわかることもありますね。

渡邊さんは、看護師として病院や研究機関に務めていましたが、以前からまちづくりや地域の中で働くことに対して興味を持っていたのだそう。あるとき、偶然見かけたのが、「暮らしの保健室」に常駐する看護師の募集説明会のお知らせでした。

 

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渡邊さん:医療者という立場から、どうやったら地域づくりに関わることが出来るのだろうとずっと考えていたんです。でも、最後の一歩がなかなか踏み込めなくて。そのとき、この「暮らしの保健室」が看護師を募集しているという話を聞いて、すごく面白いなって思って応募しました。

渡邊さんは、「悩んでいるなと感じたら、気軽に暮らしの保健室へ来てほしい」と話します。

渡邊さん:迷ったり悩んだりした時に、「暮らしの保健室」に来れば、誰かが話を聞いてくれたり、アドバイスをくれる。そうしたら、具体的になにを目指せばいいのか見えてくると思うんです。「気持ちがはりつめすぎちゃったら、ちょっと来てみたら?」って伝えたいですね。

誰もが地域の医療・福祉システムづくりに関わる社会に

医療や福祉に対する不安を抱える人が集まり、自分の思いをほどいていく「暮らしの保健室」。西さんは、プラスケアプロジェクトとして、まずこの「暮らしの保健室」を育てていくとともに、様々な地域の人がこのプロジェクトに関わることができる仕組みを作りたいと話します。

西さん:診察室の中では語られない患者さんたちの思いをすくい取る「暮らしの保健室」のような場所と、病院や福祉施設のような専門機関。そのどちらもなければ、地域社会は成り立ちません。だからこそ、誰もが参加できるようなネットワークをみんなでつくっていきたいです。

広く地域の声を拾うと言っても、実際に活動を行うためには、どの意見を優先するべきか判断しながら進める必要があります。そこでプラスケアプロジェクトが採用しているのが、運営協議会という制度です。

運営協議会にはプラスケアプロジェクトの会員が参加し、どんな事業を行うべきか、一緒になって案を考えます。その声を生かしたうえで、コアメンバーが最終的に取り組む事業を決めていきます。

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出典: https://www.kosugipluscare.com/

西さん:会員になった誰もが協議会に関わることができる。他の会員や専門家と一緒に考える機会を設けることで、医療や健康に対する意識を開いていくきっかけがつかめるのではないかと考えています。 

今の病院のあり方では、がんや認知症の患者さんやご家族の生活まで入り込めません。だから、これからは誰もが、自分の病気を、自分たちで何とかしなくちゃいけないという意識を持つ必要があります。僕たちは、専門知識を持っている立場として、一緒になって医療を生活の中に取り込んでいきたいと考えています。

自分たち自身で、健康を維持できる仕組みをつくる

今回私たちが訪れた「暮らしの保健室」は、具体的な相談はもちろんのこと、悩んだらここに来れば話ができるという、いわば地域の健康にまつわる駆け込み寺のような存在になっていました。病院でも、介護施設でもない、“第三の場所”である「暮らしの保健室」のような場所が、これからより一層求められていくことは間違いありません。

そしてプラスケアプロジェクトが目指す、「日常の中に医療を取り戻す」という考えは、どんな地域社会においても、共通して求められているものです。毎日の生活の中で心身の健康を維持できる仕組みを、自分たち自身が作っていく。

人々の意識が変わることで、誰もが健康的に暮らす地域コミュニティが、全国各地でで増えていくはずです。

日頃から地域コミュニティとつながるために

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