「すべての活動は、身近な誰かのために」川崎の地域コミュニティ仕掛け人・田村寛之さんの実践

 自分が暮らす街が、より良い場所になってほしいと思っている人は少なくないはず。でも、実際に行動に起こすとなるとハードルがありますよね。
一般社団法人「カワサキノサキ」代表理事の田村寛之さんは、越してきた街・川崎をより豊かな場所にしたいと考え、自ら活動を行っています。
常に身近なところから実践を続ける田村さんのお話の中には、地域をよくする第一歩を踏み出すヒントが数多く存在していました。

一般社団法人カワサキノサキ

kawasakinosaki.or.jp

家族のための「ゴミ拾い」から始まった地域コミュニティ活動

田村さん一家が横須賀から川崎に引っ越してきたのは、2013年の3月のことです。移り住んでからすぐに、田村さんは地域の人たちを巻き込んだゴミ拾い活動を始めました。この活動を始めた理由は「自分の家族のためだった」と言います。

「ちょうど長男が幼稚園から小学校に上がるのと、引っ越しのタイミングが重なっちゃったんです。友だちのいない街で、いきなり新しい学校生活が始まるのは、ちょっとかわいそうだなと思って。だから、街の人たちと仲良くなるきっかけを作ってあげようと考えて始めたのが、月2回のゴミ拾い活動でした」

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 引っ越す前までは、地域コミュニティのための活動なんて、ほとんど経験のなかった田村さん。けれども、ゴミ拾い活動の企画を通して、少しずつ地域の人とつながりが生まれて、頼られるように。そして、田村さんも「地域の人たちのために何ができるのか」と、積極的に考えるようになったそうです。

地元の野菜、地産地消を盛り上げる地域密着イベント「農園フェス」

ゴミ拾いから地域活動の幅を広げつつあった田村さんは、ある日ふと地元川崎で作られた野菜が、近くのお店に全然置いてないことに気付きます。

「横須賀では、近所のお店で地元の野菜が手軽に買えたんですよ。子どもにはなるべく、近くの畑で採れた安心できる野菜を食べさせたいと思っていて。周りの親御さんたちも『置いてあったら買いたいよね』と話す人が多かったですね」

田村さんは、川崎の農業について調べることに。すると、川崎市内でも野菜量は少なくないものの、流通が整っていないことがわかりました。

「僕は、川崎で野菜を作っている農家さんに会いに行きました。農家さんとつながって、まず自分が野菜を買いたいという思いがあったので(笑)。その上で、彼らの現状や、今どんな課題を抱えているのか、じっくり話を聞きました。僕ができることがあれば、なるべく協力したいと思ったからです」

それから、田村さんは川崎の農家のために動き始めました。川崎で作られた野菜はもともと「かわさきそだち」とネーミングされています。まずはプロモーションするラジオ番組を制作。また、川崎の農家とシェフ、大学の教授、異業種が集まって共同で主催する「農園フェス」の企画・広報にも参画しました。

行政と連携したり、宣伝にうまくFacebookを活用したりした結果、2015年に行われた「農園フェス」では、2000人もの来場者が訪れました。田村さんが関わる前のイベントと比較すると、来場者は5倍ほどに増えたそうです。

f:id:tks-west:20160919025719j:plain「農園フェス」の様子

「住めば都」――愛着を持って、まちづくりのために尽くす

現在は、自ら立ち上げた一般社団法人「カワサキノサキ」代表理事を務めるかたわら、Web上で地元の情報発信を行う「川崎経済新聞」編集長や、防災を楽しく学ぶための活動「Tamagawa Camp」実行委員長も兼任する田村さん。本業である消防士の仕事(米海軍基地)にも打ち込みながら、すべての活動に全力投球しています。

f:id:tks-west:20160919025733j:plain「Tamagawa Camp」活動風景 

田村さんはなぜ、生まれ故郷でもない地域コミュニティのために、一生懸命に尽くすことができるのでしょうか。

「もともと、川崎に縁があったわけではありません。けれども“住めば都”とはよく言ったもので、今ではこの川崎も、僕にとっては“地元”と呼べる場所になりました。だから、川崎のため、地域の人々のためになることなら、できる限りのことは何でもしようと思えています」

田村さんの行動する理由は、いつだってシンプルです。

「僕の活動は全部、“誰かのニーズありき”なんです。困っている人がいて、そこに自分の持っているネットワークや、広告塔としての僕の存在が役に立つのであれば、喜んで力を貸します。これからも『家族のため、子どものため』という気持ちはそのままで、この街に住む人たちの生活がより豊かになるようなしかけを、たくさん作っていきたいと思います」

人の「やりたいこと」と「足りないこと」を察知する

今や川崎における様々なコミュニティの中心人物となった田村さん。ゼロから関係性をつくっていく上で大切なことは、「話を聞くことだ」と言います。

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「人には皆、それぞれに『やりたいこと』と、『足りないこと』があるんです。まずはじっくりと相手の話を掘り下げて、それらを把握することが大事。あとは、“やりたいこと”を実現させるため、“足りないこと”を補うために、自分が持っているリソースを相手に提供する。良好なコミュニティは、こうしたギブ(与えること)からスタートします」

田村さんは、自分の人脈とコミュニケーション力を提供して、これまでにも数々のイベントを成功させてきました。2015年に田村さんが携わった「農園フェス」は、まさに格好の一例です。

「農園フェスの運営は最初、開催場所を提供する農家と地元のフレンチ料理人の2人しかメンバーがいなかったんです。彼らはそれぞれに農業、料理のプロだけれども、当然ながらイベントのプロではなかったから、広報と集客、そして大事なブランディングにすごく苦戦していて。そこで僕らは、農園フェスの実行委員会を立ち上げ、僕の知り合いで協力してくれそうな人に声をかけました」

田村さんの呼びかけに応じて、実行委員会には初動から約10人もの協力者が集まったのだとか。これも、日頃から田村さんが「まず自分からギブすること」を実践しているからこそなのでしょう。

「楽しそうにやること」が地域コミュニティ活動の最大の求心力

コミュニティづくり、人集めが上手になるポイントとして、田村さんは「自分からギブすること」の対として、大事にしていることがあると話します。

「誰かから何かをしてもらった時は、その倍を返すように意識しています。そうすると、お互いがいつでも、快く協力し合える関係になっていくんです」

ただ、付き合いが広がっていく中で、相性のよくない人と出会うこともあると思います。苦手な人とやり取りする必要が出てきた時、田村さんはどう対処しているのでしょうか。

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「僕みたいにグイグイくるタイプが苦手な人って、悲しいかな必ずいるんですよね(笑)。そういう時は、自分が無理にコミュニケーションを取ろうとしないで、自分のコミュニティの仲間とつながってもらうようにしています」

コミュニティのことを、全部ひとりで背負い込む必要はない。お互い足りない部分はギブし合えばいいーー田村さんの考え方の根幹には「助け合いの精神」が、揺るぎなく宿っています。

「地域全部を巻き込んでいく上では、敵は作らない方がいい。気の合わない人と敵対しないためには、適度な距離感を持つことも、時には重要なんです。みんながハッピーになるのがベストですから。

あとは、コミュニティを盛り上げたいなら、楽しそうにやること。人は楽しそうな場所に、自然と集まってくるものです。『コミュニティに貢献しよう』という責任感も大切ですが、それよりも『めいいっぱい楽しんでやるぞ!』という姿勢が、人を巻き込む力につながっていきます」

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 満面の笑顔で「自分のコミュニティの活動は、僕がいつだって一番楽しんでますから」 と語る田村さん。彼のもとに人がたくさん集まってくる最大の理由は、きっと「楽しそう」だからなんだろうなと感じます。

マチマチでご近所さんと「おしょうゆを貸し借りできるようなやり取り」ができたらいい

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川崎の多くのコミュニティの盛り上げ役を買って出ている田村さんに「マチマチの活用法」について伺ってみました。

マチマチを最初に知った時、田村さんは「ありがたい」と感じたそう。

「地域コミュニティの活動をしていく中で、何かしら地域に限定した、シンプルなつくりの『日頃の情報交換のための場所』が必要だなと感じていて。地元住人同士だからこそ共有できる情報って、結構たくさんあるんですよ。なので、マチマチはまさに『こんなの今まで欲しかった!』というサービスでした」

田村さんは、マチマチを通してご近所間のやり取りが盛んになった先に、思い描いているイメージがあると話します。

「理想としては、『おしょうゆ切らしちゃったから、ご近所さんに借りよう』くらいの親しいコミュニケーションが、マチマチの中で成立するようになってほしいですね。そしたら、今の地域社会の在り方が根本的に変化して、面白いことがたくさん生まれてくると思います」

みんなが求めているのは、ママ友やご近所さんと盛り上がれる、地域の「小ネタ」

マチマチはまだ使い始めたばかりだという田村さん。今後、マチマチをどのように広めていくのか、考えているプランを聞いてみました。

「商店街と連携して、マチマチを利用したイベントをやりたいですね。人が集まる場所で催しをやると、そこでまた新しい人脈が広がります。何ができるかは明確に見えていませんが、『一緒に面白いこと、考えていきませんか?』という姿勢で、まずは話をしてみようかなと思います。自分だけで考えているより、いろいろなアイデアが出るはずですから」

また、田村さんは「一種のマーケティングリサーチの場としてマチマチを活用したい」と語りながら、次のように続けます。

「ご近所の知りたい情報を、ご近所限定で欲しい時があるんですよね。緊急性の情報や、ローカルなネタ、病院の評判とか。僕は川崎経済新聞を立ち上げてから、気づいちゃったんです。皆さんが求めている情報は道端に落ちている“小ネタ”なんですよ。ママ友やご近所さんと、ちょっと立ち話で盛り上がれるような。

身近にある小ネタであればあるほど面白いんです。『へぇ~知らなかった』という情報に反応したり共感したりする人は、とても多いと感じていて。そして、マチマチではこうした地域の小ネタが集まりやすいです。今後はマチマチを、川崎経済新聞の記事の情報収集にも役立てようと思っています」

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ギブの精神をベースに持ちながら「協働する」スタンスを大事するーー田村さんの「巻き込み力」は、こうした思考に支えられているのだろうなと感じました。そして、この考え方は、マチマチを広めていく上でのポイントになりそうです。

地域コミュニティづくりに「マチマチ」を使ってみよう!

マチマチでは今後も引き続き「コミュニティデザイン」にまつわるリサーチ・インタビューを継続的に行なっていきます。ぜひ、チェックしてもらえたら幸いです。「地域でコミュニティを作って盛り上げたい」と考えている方は、マチマチを使ってみてくださいね。

machimachi.com