地域課題に挑む人をつなぐ「中間支援」を地域社会のためにーー文京区フミコムのコミュニティマイスター田邊健史さん

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草の根的活動を通して地域などでコミュニティを生み出すコミュニティマネージャーがいる一方、行政に近い立ち位置から、地域コミュニティの発展をを包括的に支援する人も存在します。

今回のインタビュー企画では、文京区に位置する地域連携ステーション「フミコム」でコミュニティマイスターとして活動する田邊健史さんにお話を伺いました。

文京区の地域連携ステーション「フミコム」

2016年4月に文京区にオープンした、新たなつながりを創出し、地域の活性化や地域課題の解決を目的とした地域連携ステーション「フミコム」。

フミコムは、文京区社会福祉協議会が区や地域住民・ボランティア・NPO・企業・大学等と連携して、新たなつながりを創出し、地域の活性化や地域課題の解決を図っていくための協働の拠点です。

田邊さんはこのフミコムで「コミュニティマイスター」として、課題解決に向かって活動する人の相談や、これまで文京区でできなかったマッチング支援等を行う役割を担っています。

地域で活動するさまざまな人の課題解決をサポートしてきた田邊さんに、なぜコミュニティマイスターとして活動するのかを伺いました。

コミュニティマイスターの役割とは

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地域連携ステーション『フミコム』でコミュニティマイスターとして関わる田邊さんですが、現在の肩書きを説明すると、必ず『コミュニティマイスターって何ですか?』と聞かれると言います。たしかに聞き慣れない言葉が並ぶ田邊さんの活動。フミコム、コミュニティマイスターのできた経緯と、現在の活動の内容について、まずご説明いただきました。

「フミコムはオープン前の約1年間、区・企業・大学・活動団体の方による検討委員会を結成。文京区に必要な施設に向け、議論を重ねてきました。そこで2つの意見がまとまりました。

1.フミコムのコンセプトとして「拠点機能」「ハブ機能」「ファシリテーション機能」「創発機能」の4つに集約されること

2.それぞれの機能の効果を高めるために、さまざまな人や活動の出会いの場を創り結びつけるコーディネーターの存在が不可欠

コーディネーターの役割としては、地域に課題意識をもつ方に、どう活動していけばいいかの相談に対応できる豊富な知識・情報・ネットワークを持っていること。地域で行われている活動を整理・可視化し、困りごとや求められていることの本質を見抜き、その活動に本当に必要な社会資源とつなぐ役割が求められていることが分かりました」

同施設でコミュニティマイスターとして活動する田邊さんですが、あまり聞き慣れない肩書きである「コミュニティマイスター」とは、どのような役割なのか、お伺いしました。

「フミコムを運営する文京区社会福祉協議会は、フミコムがオープンする以前から、福祉分野を中心として、地域の人とのつながりを持っていました。しかし、地域の人が何かを生み出したり、福祉の分野を超えて、新たなつながりを創出する取り組みが十分にはできていなかった。その役割をどう担うかを考え、フミコムのオープンを機に活動の専門家として『コミュニティマイスター』を設置することになりました」

つながりを生み出す、新たに活動を行う人を増やす……といっても、コミュニティマイスターはあくまで「相談内容に対して、すぐに解決策を提示することではない」と田邊さんは語ります。

「コミュニティマイスターが行うのは、まずは要点の整理。フミコムへ相談に来る人は『こんなのできますか?』といった抽象的な相談が多いんです。いただいた抽象的な話を、『こういうことですかね?』と問いかけながら相談内容を整理し、主体的に次の一歩へ進むためのお手伝いをするのが最初の役割です」

 

「協働ステーション中央」の運営から活動支援の世界に飛び込み、1,500件以上の活動相談にのりつづけてきた

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地域活動支援の専門家「コミュニティマイスター」として活動する田邊さんは、どのようにしてその専門性を身につけたのでしょうか。

田邊さんがコミュニティマイスターとして働くまでには、いくつかのターニングポイントがありました。田邊さんは大学で環境系の学部で学びつつ、環境系のNPOでインターンにも参加。大学卒業後は、飲食業界へ就職するものの、現在の活動へつながるNPO向けの中間支援を行う「NPOサポートセンター」へと転職。このNPOサポートセンターへの転職は、現在の仕事にいたるまでの1つ目のターニングポイントとなります。

「NPOサポートセンターに転職したのは、26歳。ちょうど将来を考え直そうと思っていた頃で、インターンでつながりがあったNPOサポートセンターに縁あって、誘ってもらったのがきっかけです。そこから、NPO向けの『活動支援』の仕事を始めました」

そこから中央区にある「協働ステーション中央」で、施設の開設準備から活動支援コーディネーターとして抜擢。これが、2つ目のターニングポイントとなります。2010年にオープンした協働ステーション中央は、中央区における活動支援の拠点。田邊さんは、この施設でNPOだけではなく、町会・自治会、ボランティア団体、企業を含めた地域活動団体の支援を行うことになりました。

「当時はまだ、NPO以外の地域活動団体への支援は、仕事として経験はありませんでした。ただ、中央区でこういった拠点ができると聞いて、自分の次のステップとして面白そうだと思い参加したんです。ココでの主な役割は、地域活動団体が協働事業を行政に提案するために、相談から申請受付・助言・行政担当者の選定から協議の場の設定など、総合的な窓口機能を担当しました。日常的な活動相談も含めて、年間約300件の活動の相談に。計1,500件以上の相談に乗る中で、事業構築の支援を通じて活動支援とは何かを磨いてきました」

活動の意義を開拓し続ける、フミコムでの活動支援

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中央区での経験を経て、フミコムに参加することとなる田邊さん。採用面接のときに、こんなやり取りをしました。

「フミコムでのコミュニティマイスターの採用面接で、わたしは『コミュニティマイスターは、どのような活躍をしていれば機能していると言えるのでしょうか?』と逆に面接者に質問をしました。中央区で活動するなかで、こういった役割は成果指標を設定しづらい、という課題を感じていたからです。

この答えに正解はありません。世の中のコーディネーターには役割が定義づけられていましたが、コミュニティマイスターは役割は明確に決まっていなかったのです。難しいポジションだとは思いつつも、『自分の取り組み次第で、開拓できる状況』に魅力を感じました」

選考を経て、田邊さんはフミコムでのコミュニティマイスターとして活動を始めました。コミュニティマイスターの最長任期は3年。この3年という期間をもとに、田邊さんは自分なりに中長期で目標と役割を考え、どのように成果を出していくかを設定していきました。

「3年で成果を出すことから逆算して、1年目は地域の情報を収集する時期。2年目でさまざまなチャレンジを仕掛けていく時期。そして3年目で結果を収穫していく時期という計画を立てました。

次に役割を考えるにあたっては、フミコム、そして私自身が担う活動支援の意義と役割をあらためて考えました。中間支援はあくまで触媒です。極端な話、当人同士で関係を築ければ、いなくてもいい存在だと捉えています。でも、現状は活動者同士の連携が難しいことが多いので、仲を取り持つ役割の必要性が叫ばれている。そもそも、価値観が異なる人とは、接点を持つ機会が少ないんですよね。自然とは出会わなそうだけど、出会ったらお互いの活動が盛り上がりそう――そういった人たちをつなげ、新しい関係を生むこと。それを、フミコムのコミュニティマイスターの最初の役割に設定しました」

 

1年間の活動を通して見えてきた地域課題の輪郭

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実際にフミコムでコミュニティマイスターとして活動し始めて、1年が経過しました。田邊さんが考えた「地域の情報を収集する時期」を終え、文京区のなかでどのような活動支援をしていけばよいか。田邊さんは次のように語ります。

「文京区は、地域に愛着を持っている人が、とても多いです。子供の学習支援、高齢者の見守り支援など、フミコムができる前から、さまざまな活動が行われている。地域の課題を解決しようと行っている活動が、まだまだ一般的に知られていないこともわかってきました。

現在活動している人が持っている潜在的な価値は高いものの、よそ者の視点からのアドバイスが必要だと思っています。個々の活動が地域においてどんな価値を生み出しているのか、価値を再度見直すことで、より本質的な目標にむけたつながりができればと思っています」

そして、さまざまな活動が存在するからこそ、その活動によって重要性やわかりやすさにムラが存在します。そのムラ≒多様性を理解し、バランスをとって支援を提供することも必要になると、田邊さんは指摘します。

「地域の活動は多様性があります。活動のスケールが大きいNPOもあれば、少人数の当事者団体もあり、なかには活動内容がわかりにくい団体もある。たとえば難病支援といっても、難病自体の知名度が低く、どれくらいの人が困っているか知られていない団体もあります。逆に子育ての支援は、分かりやすいものですよね。

フミコムとしては、地域活動に関わるすべての方々を支援したいのですが、残念ながらリソースが限られています。地域活動の多様性を理解しつつも、それぞれの必要性を見極めながら、支援する優先順位や程度を決めていかなければりません。単純に規模や認知度だけではなく、本質的に活動の必要性を精査して、小さくても尊い活動をしている方々も、しっかり支援していきたいと考えています」

 

オンラインツールは地域の情報が集まる場に

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地域において、場を通してつなげる活動を行う一方、現在であればオンラインでつながりを作るツールも数多く存在しています。実際文京区には「文京区さいこう!」という3,800人以上が参加するfacebookグループも存在します。オフラインの場をベースにする田邊さんは、オンラインツールをどのように考えているのでしょうか。

「わたし自身は、SNSも基本的には実際会ったことのある方とつながっているので、オンラインオフラインの使い分けをあまり意識したことはなくて。ただ、いまの時代あえてオンラインに何を期待するか考えると、地域で何が話題なのかといったことを、知るきっかけを作れればいいのではないかと思います。その場にいなくても、地域の生の情報が集まる役割ですね」

そこで、田邊さんにマチマチを文京区で活用するにはどのような利用の仕方があり得るかを聞いてみました。

「マチマチは、まさに地域の『今』の情報が集まる場になれると思います。はじめはなかなか情報が集まらないかもしれません。であれば自分から発信すればいい。ただわたしのような立場は、情報を積極的に発信する立場として定着すべきではなく、情報を発信する人を増やしていけるといいなと思いますね。

わたしの立場から見ると、自分のことばかりではなくて、人がやっている活動をピックアップして発信するのも一つのやり方かなと思っています。目利きをしてピックアップし、『こういう情報があるよ』という感じで認知を広げる役割を担っていければいいと思います」

 

もっと活動支援の価値を、地域社会にみせていかなければいけない

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最後に、1年間の活動を経て2年目のアクションが見えたいま、フミコムにおける活動支援の今後、そして田邊さん自身「コミュニティマイスター」として、今後をどのように考えているかを伺いました。

「フミコムがどうなっていくかを考えるためには『地域があるべき姿』という視点から考えなければいけません。地域の課題が生まれたときに、主体的に人と人がつながり、その課題を解決していくというのが本来あるべき姿です。地域で主体的に活動し、つながり、解決していく人を増やすことが、わたしたちの目指すべきところです。

とはいっても、説明や活動経歴だけでは判断できませんから、見極める目利きの機能を磨き上げることが必要です。相談をしてきた住民の皆さんが『フミコムが言うなら、まずはやってみよう』という状態になるまで、目利きの機能を向上させ、信頼を得られることが理想ですね」

他方で、田邊さん自身については、活動支援やコミュニティマイスターといった役割がより価値を認知され、価値を認めてくれる人を増やしていきたいといいます。

「フミコムは利用者からお金をいただくわけではないので、公共的なサービスとして活動支援を提供しています。しかし、より専門的に解決してほしいと思われる存在にならなければいけません。

コミュニティマイスターは“つなぐ”ことが仕事で、別にかたちがあるものではない。つないだという実績しか残らないので、この業界いる人自身、自分のやっていることは何の役に立つのかと疑問に思っていることも少なくないです」

活動支援の難しさを説きながらも、田邊さんが目指したい姿について言葉を続けます。

「ただ私自身は、一つの地域団体で活動することも大事だと思う一方で、広い視点で世の中にたくさんある活動全体を支援していくことも大切だと、大学生の頃に感じました。もっと俯瞰して、様々な分野を横断して活動を支援することで、全体として大きな課題に挑んでいきたい。だから私は、自分がプレイヤーになるのではなく、中間支援という立場を選んでいます。もっと中間支援の価値を、地域社会に認知してもらいたい。そのために、今のポジションで着実に成果を挙げて、世の中にアピールしていきたいと思っています」

田邊さんのような中間支援を行なう人は、縁の下の力持ちのような存在です。これからのよりよい地域活動、地域コミュニティを考える上で、とても重要な役割を果たします。地域全体を盛り上げる施策を検討する際には、田邊さんの「コミュニティマイスター」としての考え方や動き方が、きっと参考になるはずです。

住人コミュニティづくりは、地域特化のご近所SNSで

フミコムのように地域情報が集まる場は、地域で活動をする人にとって、横のつながりや活動する仲間を見つけるにも最適。ご近所SNS「マチマチ」は、近隣に住む人同士でコミュニケーションや情報共有ができるサービス。これから地元や地域を盛り上げていきたいと思っている方、いま住んでいるまちのお役立ち情報が知りたいという方、ぜひ一度使ってみてください。

machimachi.com